チームの状態や成熟度合いに応じて、人間関係はどう整える?
モニカ株式会社代表取締役 CEO 兼 COO
前回のブログでは、組織文化には直接さわれないけど、関係性にはリフレクションを通してさわれることを示しました。今回は議論を一歩先に進めて、「チームの状態に応じたリフレクション」のヒントを考えてみましょう。
- 組織文化とリフレクションの関係を理解する
- https://www.monica.team/blog/2019/021501
組織の発達段階を整理する、タックマンモデル
組織の発達段階を今より前に進めたい。組織を機能させたい。これは組織の中で働く人類共通の願いに違いないわけですが、心理学者のタックマン・ブルースは、チームの発達段階を形成期(Forming)・混乱期(Storming)・統一期(Norming)・機能期(Performing)の4段階(注1)で説明しています。

チームビルディングの文脈でよく引用されるモデルですよね。
今回考察したいのは、チームの発達段階が違えば、そのチームを構成している関係性の触り方も違うんじゃない?ということです。怒っている犬を撫でようとしても、手を噛まれるのがオチですよね。チームの状態はそれぞれ違うのに、対処方法が同じ、ということはありえないはずです。
そこで今回は、タックマンモデルの各段階で求められる「関係性のさわり方」、すなわちリフレクションの方向性について考察してみます。
チームの発達段階に応じた、関係性のさわり方
形成期(Forming)
タックマンによると、チームの形成期においては、各メンバーが試行錯誤することで、チーム内の方針・指示や、依存関係を確認するといいます。
新しいチームにジョインした時に、資料を読み込んだり、リーダーやメンバー、その他の関係者に話しかけたりして、チームの方針やメンバー間の関係性、その中での自分の役割・位置付けを把握しようとしますよね。期待と不安が入り混じる、そんな時期です。したがって、この段階ではまず、メンバーの不安を取り除いてあげるようなリフレクションが求められるといえそうです。ジョハリの窓でいうところの「開かれた窓」を広げ、「隠された窓」を減らしていく、自己開示のリフレクションです。
混乱期(Storming)
形成期を経ると、次に直面するのが、メンバー同士のコンフリクトと分裂です。これは、自分の役割・位置付けが決まってくることとともに様々な対立も発生し、感情的になってしまうことに起因します。あの人には何を言っても無駄だ、どうせ自分の意見なんて聞いてもらえない。チームで仕事をしていれば、そんな気持ちになることもしばしばでしょう。しかし、この段階を乗り越えることができれば、チームは大きく前進します。
この段階では、自分の信念のようなやや深めの自己開示をすることに加え、他のメンバーにフィードバックすること、そしてそのフィードバックをそれぞれが受け入れることのできる信頼関係の構築が求められます。ジョハリの窓でいうところの「盲点の窓」を開くリフレクションです。
最も大変な段階ですが、リフレクションを繰り返すことでチームとしての経験学習サイクルが生まれ、新しい規範ができ始めたら、混乱期の終わりはすぐそこです。
統一期(Norming)
混乱期が克服されると、チームの統一感・一体感が醸成されます。新しい規範が作られ、そこから生じた新しい役割が受け入れられるようになります。メンバー同士がより親密になり、個人の意見が闊達に交わされるようになります。この段階では、「隠された窓」や「盲点の窓」を開くことへの抵抗はほとんどありません。リフレクションを通じて、経験学習サイクルを回す量・質(シングルループ学習のみならず、ダブルループ学習まで視野に入れる)を充実させることで、共有ビジョンを作ることが可能になるでしょう。

機能期(Performing)
最終的には、メンバーの役割がより柔軟になり、機能的になり、チームの活力が自分の仕事に反映されるようになります。チームの構造的な問題はスピーディに解決されるようになり、仕事の成果に関しても協力的になります。チームでの仕事の成果が、各個人の成果にうまくつながるようになる段階です。この段階では、経験学習サイクルを高速で回しつつ、計画や行動の前提を問い直すダブルループ学習のリフレクションをすることで、新しい価値ーイノベーションーが生み出されることでしょう。
これらをざっくりイメージ図にすると、下記の通りです。

自分たちのチームがどの段階にいるのかをしっかり見つめて、そこからリフレクションの対話を通して、未来を作る。 地道ですし、時には厳しい現実と向き合うこともあるかも知れません。しかし、こうした積み重ねがチームメンバーのエンゲージメントを高めて、やがてたくさんのイノベーションを起こすことにつながっていく。僕はそう信じています。