組織文化とリフレクションの関係を理解する
モニカ株式会社代表取締役 CLO
組織文化という言葉があります。組織文化は、組織の風土、体質等とも表現される言葉で、組織開発の分野ではよく使われる言葉です。組織開発の目的としてその変化が求められることも多く、組織文化への理解はこれからの組織を考える上で避けて通れない要所となります。今回のブログでは組織文化という言葉を改めて整理してみると共に、その変化にはリフレクションが大切になることを考えてみようと思います。
組織文化とは
それでは早速、組織文化という言葉について整理してみましょう。例えば、世界的に有名なアメリカの心理学者エドガー・シャインは組織文化を次のように定義しています。
文化は、グループによって学習され共有された暗黙の過程のパターンである。それが外部への適応や内部での統合の問題を解決していく。十分な成果を上げてきたためその有効性を認められ、そういった問題との関わりの中で物事を知覚し、考え、感じる正しい方法として、新たに加わるメンバーに教示されている。(1)
また、日本の経営学者の加護野忠男によると、組織文化は次のように定義されています。
組織文化とは、ある組織の成員によって共有されている価値観や行動規範ならびにそれらを支えている信念である。(2)
どちらも言っている内容は同じようなことですね。
「こんな時には、こんな考え方をして、こう行動する」という「組織の皆が従う暗黙のフロー」のようなものが組織文化だ、ということです。
ただ、僕なりに考えていることは「文化とは、人と人の関係性の集まりでもある」ということです。というのは、人はお互いに必ず関係性を持っていますよね。そして人の行動はその関係性に大きく影響を受けます。同じ出来事が起こっても、その場にどのような人がいるか(どのような関係性があるか)により、出来事をどう捉えるか、どう行動するのかは異なります。
組織の文化とは、人と人、個と個の関係性が積み重なっていったものであり、組織文化を扱うということは、組織を構成する人と人との関係性を扱うことでもある、という認識です。
先の定義において、エドガー・シャインは組織文化を「学習され共有された暗黙の過程のパターン」と表現していますが、それは言い換えると「日々のコミュニケーションの結果、構築された関係性」とも表現できると考えています。
文化は直接触れない
さて、組織開発の現場では「組織文化を変革するのだ!」というセリフがよく聞こえてきます。しかしながら、同時に聞こえてくるセリフは「文化の変革って難しい」です。なぜ難しいかといったら、組織文化は直接触れないからだと思います。
たとえば仕事のワークフローは、直接触れますよね。「ここが問題になってるから、こう変更して、こうすれば、全体の流れがスムーズになるね!」と直接変えることができます。
一方、組織文化は「ここが問題だから、こう変更して・・・明日からこのような文化にしよう!」とはなりません。組織文化は関係性であり、雰囲気や空気感のようなものでもあるので、直接触って変えることはできないのです。
では、組織文化を変化させるにはどうすればいいのか。その解は「関係性を変えること」なのです。
リフレクションは文化を触る道具である
先ほど、文化をつくるのは一人ひとりの関係性だということを考察しました。この考え方に沿えば、直接触れない文化でも、関係性を通して触ることができそうです。そして関係性を触るための道具が、リフレクションです。
リフレクションとは、大きく「振り返り」を指す言葉であり、一度立ち止まって物事を考え直してみることをいいます。
「苦手だな…」と思っていた人でも、改めてその人の話を聞いてみると「あれ、意外といい人!」と思うことがあるように、物事を改めて考え直していくことで、私たちは関係性を変化させることができるのです。
ここまでの話をまとめると、「組織文化」「関係性」「リフレクション」は次のような図で関係づけることができます。

組織文化は直接は触れないのですが、関係性を通して触ることができます。そして関係性は、私たち一人ひとりがリフレクションを行うことにより変化させることができます。つまり、組織文化は関係性というクッションを挟み、リフレクションにより変化させることができるというわけです。
実際、組織開発の現場では仲間同士の対話を通したリフレクションが数多く実践されており、様々な問いにより、関係性を変化させるアプローチが試みられています。
皆様もたとえば、次のような問いで仲間と対話をしてみてください。
- 一人ひとり、仕事をしていて楽しいことは何だろう?
- どんな言葉を嬉しく思うのだろう?
- なぜ、そう感じたり、考えたりするのだろう?
- 私たちはお互いに、何を正しい、間違っていると思っているのだろう?
- その信念はどのような経験からつくられているのだろう?
- そもそも、私たちは何を目指しているのだろう?何が嬉しいのだろう?
- 一人ひとり、どのような前提で物事を見ているのだろう?
少々難しい問いもありますが、前半の簡単な問いを話すだけでも、多少なりとも関係性が変化することがわかると思います。
「それだったら、次からアレをお願いするね!」
「知らなかった、そういう背景があったんですね」
こういう言葉が聞こえてきたら、関係性が変化し始めているサインです。
組織を変えたいな。でもどこから始めればいいのだろう?そんなことを考えている方は、まず小さなグループでよいので、リフレクションをしてみてください。最初の一歩はきっとそこから始まります。